第３回

• 仕掛け（からくり）からロボットへ…「自動機械のイメージ」の変遷
  • 時代の技術に応じた機械観
    • 古代：呪術的人造人間：ゴーレム

    • ギリシャ：仕掛けからくり

    • 中世：錬金術的人造人間：ホムンクルス（パラケルスス）

    • 近代：歯車・てこ・滑車によって動く自動機械

    • ２０世紀前半：自動機械のパラドクス：『メトロポリス』『モダンタイムス』など

  • ライプニッツの発想

    　「機械論的なプログラム」（すなわち、自然現象の理解可能な説明という目的）は、ライプニッツが命あるものに特別な地位を取り除けておくことを妨げなかった。生物の体内においても、あらゆるものが機械的に説明されるべきであることは確かだが、生き物という「自然的な、神によって創造された機械」と「人間が技術によって生み出した機械」の間には質的な相違がある。「自然の機械」は、無限に小さな部分に至るまで、それ自体が全て機械であり、それゆえに無限に多くの器官をもっている。ここに「自然」と「人間の技術」の間の決定的な相違がある。というのは、人間が素材を無限に細かく分解しようとしても不可能であり、生きた動物や人間を技術によって組み立てることはできないからである。だが、そこから導かれる「限界」をあまりに狭く理解してはならない。人間の行動を真似る自動機械、あるいは動くために知性を必要とするように見える機械は、ライプニッツによれば完全に実現可能である。その例として、彼は、自ら港を目指して航行する船や、町を散歩して指示された通りの角を曲がる自動機械について述べている。ライプニッツは、将来、機械が高度の知的能力をもつということが技術的に実現可能であると考えていたのであろう。計算機の発明と普遍的記号法（《characteristica universalis》）の考案は、どちらも「合理性」を機械化する計画の一環としてつながっているのである。普遍的記号法の発明により、精神の進むべき方向がほとんど機械的に示される。あらゆる知的な問題は、究極的には計算の問題へと還元される。身体と魂の関係について異なった見解を持つ二人の哲学者は、その問題について「さて、計算してみよう！」《calculemus!》と言い得るのであり、彼らの論争は計算機の助けによって決着がつくのである。だが、「合理性」を機械化するという計画があるにもかかわらず、また、自然科学においては単なる機械的な説明が許されるにもかかわらず、「感覚」や「表象」、まして「意識」は、機械的に説明もされなければ機械によって生み出すことも不可能なのである。例えば、感覚と表象をもっている機械があると仮定して、その機械はちょうどわれわれが製粉所に入るように、その中へ入れるほどの大きさだとしよう。しかし、そこには互いに噛み合う部品があるだけで、感覚や表象を説明する材料は何も見つからないだろう。
    　『われわれは「自然」をどう考えてきたか』p.247（どうぶつ社）

• ライプニッツの構想の実現としてのコンピュータ

  ・「思考のアルファベット」は見つかるか？

  • 例：「全ての俳句」を見つけるには？

    　５０音（実際には４５音）から繰り返しを許して１７音を組み合わせた配列を全て列挙すればよい。

    その組み合わせは、４４×４５＾１６　通りになる。（文頭の"ん"は除くから。）
    概算すると、 1.244093144371×10^28　通りである。（コンピュータの有効桁を超えてしまう。正確に計算するためにはプログラムに工夫が必要。）

  • 試しにカ段からハ段までの２５字を用いて俳句の最初の５文字を求めるプログラムを示そう。可能な組み合わせは　25^5=9765625　通りである。（プログラムをコピーし、「.bas」の拡張子をつけた上で、第６講にあるchipmunk-basicをダウンロードすれば実行できる。ただし、パワーブックＧ３、３３３ＭＨｚで計算に１７時間かかった。結果を記録したテキストファイルは約１２８Ｍバイトの大きさになる。途中で止めるにはchipmunk-basicメニューバーのcontrolからstopを選択すればよい。）

    プログラム例

    5  open "kekka.txt" for output as #1
    10 for a=1 to 5
    20 if a=1 then a$= "k"
    30 if a=2 then a$= "s"
    40 if a=3 then a$= "t"
    50 if a=4 then a$= "n"
    60 if a=5 then a$= "h"
    70 for b=1 to 5
    80 if b=1 then b$= "a"
    90 if b=2 then b$= "i"
    100 if b=3 then b$= "u"
    110 if b=4 then b$= "e"
    120 if b=5 then b$= "o"
    130 for c=1 to 5
    140 if c=1 then c$= "k"
    150 if c=2 then c$= "s"
    160 if c=3 then c$= "t"
    170 if c=4 then c$= "n"
    180 if c=5 then c$= "h"
    190 for d=1 to 5
    200 if d=1 then d$= "a"
    210 if d=2 then d$= "i"
    220 if d=3 then d$= "u"
    230 if d=4 then d$= "e"
    240 if d=5 then d$= "o"
    250 for e=1 to 5
    260 if e=1 then e$= "k"
    270 if e=2 then e$= "s"
    280 if e=3 then e$= "t"
    290 if e=4 then e$= "n"
    300 if e=5 then e$= "h"
    310 for f=1 to 5
    320 if f=1 then f$= "a"
    330 if f=2 then f$= "i"
    340 if f=3 then f$= "u"
    350 if f=4 then f$= "e"
    360 if f=5 then f$= "o"
    370 for g=1 to 5
    380 if g=1 then g$= "k"
    390 if g=2 then g$= "s"
    400 if g=3 then g$= "t"
    410 if g=4 then g$= "n"
    420 if g=5 then g$= "h"
    430 for h=1 to 5
    440 if h=1 then h$= "a"
    450 if h=2 then h$= "i"
    460 if h=3 then h$= "u"
    470 if h=4 then h$= "e"
    480 if h=5 then h$= "o"
    490 for i=1 to 5
    500 if i=1 then i$= "k"
    510 if i=2 then i$= "s"
    520 if i=3 then i$= "t"
    530 if i=4 then i$= "n"
    540 if i=5 then i$= "h"
    550 for j=1 to 5
    560 if j=1 then j$= "a"
    570 if j=2 then j$= "i"
    580 if j=3 then j$= "u"
    590 if j=4 then j$= "e"
    600 if j=5 then j$= "o"
    605 print a$;b$;c$;d$;e$;f$;g$;h$;i$;j$+"  "
    610 print #1,a$;b$;c$;d$;e$;f$;g$;h$;i$;j$+"  "
    620 next j
    630 next i
    640 next h
    650 next g
    660 next f
    670 next e
    680 next d
    690 next c
    700 next b
    710 next a
    720 close #1
    730 end